矢部「パワプロくん、何やってるでやんすか？｣

矢部「ゲームでやんすかー、どんなのでやんす？かわいい女の子が出てくるでやんすか？」

パワプロ「ははは、そんなんじゃないよ。高校球児を育ててプロ入りさせる育成ゲームさ｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

矢部「あー、あれでやんすか。パワプロくんもやってたでやんすね」

パワプロ「矢部くんもやってるの？SRキャラ何持ってる？フレンド登録しようよ｣ｷﾗｷﾗｰ

矢部「ま、待つでやんすよ、オイラはやってないでやんす、オイラのクラスで人気があって知ってただけでやんす…」

パワプロ「…なーんだ｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

矢部「…けっこう課金してるでやんすか？」

パワプロ「んーん、無課金で楽しめるものにお金かけるなんてしないよ、それにバイト代は現実の野球用品とかに使わないとね｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

矢部「…そうでやんすか、安心したでやんす。そういうのは一旦課金すると際限無くなるでやんすからね、ところでパワプロくん」

パワプロ「ん？なにー？｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

矢部「そろそろ練習始まるでやんすよ」

パワプロ「あ！ヤバい、監督に怒られる！｣ｽﾏﾎｼﾏｲｰ

パワプロ「…まーたDランクか…」

パワプロ「やっぱり無課金だと限界があるのかなぁ…」

パワプロ「…パワ石6個で120円セールか…」

パワプロ「今手持ちのパワ石は40個…10連引くにはセールの石を買っても4個足りない…」

パワプロ「セール品だけ買って…チャレンジボーナスで…」

パワプロ「120円くらいなら課金してもいいよな」

矢部「課金すると際限無くなるでやんす」

パワプロ「！」

パワプロ「…ぼくは大丈夫だろ｣ｶｷﾝｰ

パワプロ（はぁ…結局10連でSR出なかった…やっぱりログインとかで貯めた石だからSR出ないのかな…）

パワプロ（やっぱりもっと課金しなきゃダメなのかな…）

矢部「今日のパワプロくん元気ないでやんすね」

モブA「練習に身が入ってないよな」

モブB「悩み事でもあんのかな」

矢部「練習終わったらそれとなく聞いてみるでやんすかね」

練習後

矢部「パワプロくん、今日は元気がないようでやんすけど、どうかしたでやんすか？」

パワプロ「…いや、特に何もないよ…ちょっとゲームのことでね｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

矢部「例のアプリでやんすか？…あ、さては昨夜徹夜して選手作ってロクに寝てなかったってオチでやんすね！｣ﾌﾟﾌﾟｰ

パワプロ「…そんなんじゃないよ…ちょっとだけ課金したんだけどSRキャラ出なくてさ…」

矢部「あぁ、それで課金したことに後悔して身が入らなかったのでやんすか？」

矢部「まぁ1回くらいならクヨクヨしちゃダメでやんすよ、課金額も大したことないでやんしょ？」

パワプロ「違う！課金したことを後悔してるんじゃない！どうしてもっと早く課金してSRキャラ集めなかったのか後悔してるんだ！」

矢部「あ…（察し）」

パワプロ「あぁ…昼休みにiTunesカード買ってきて練習始まる前にたっぷり課金したよ…」

矢部「…ちなみに額は…？」

パワプロ「2万」

矢部（うわぁ…）「いやでもそれでレアキャラ出たでやんしょ？もうあまり課金しないほうがいいでやんすよ」

パワプロ「…出ないんだよ｣ﾎﾞｿ

矢部「え？」

パワプロ「パワ石300個買って10連30回引いても欲しいSRキャラが出なかったんだよ！！！！」

矢部（ﾋｪｯ）「そんなの出るわけないでやんすよ、ガチャの確率なんて限りなく低くなってるんでやんすから、それで射幸心を煽って課金させて儲けるシステムなんでやんすし」

矢部「もうあまり課金しないほうがいいでやんすよ、今回のは勉強だと思って…」

パワプロ「うるさい…」

矢部「え？」

矢部「？！」

パワプロ「ぼくが稼いだバイト代をどう使おうが勝手だろ！！矢部くんに迷惑かけてるわけじゃないだろ！！」

矢部「いや、オイラはパワプロくんのことを思って…」

パワプロ「ぼくのことを？よく言うよ、そんなこと気にする前にもっと練習して野球上手くなりなよ、少し足が早いくらいしか取り柄ないくせに！！」

矢部「な…？！今はその話は関係ないでやんしょ！！」

パワプロ「あ、もしかして本当は矢部くんもこのアプリやってるんじゃないの？それでぼくが課金して自分が持ってないSRキャラ手に入れるのが悔しくて邪魔しようとしてるんでしょ？小さいねぇ矢部くんは｣ﾌﾟﾌﾟｰ

矢部「あったまきたでやんす！そんなに言うなら勝手にするでやんす！！どうなっても知らないでやんすよ！！！」

パワプロ「貧乏人は悔しがってくださいな、ぼくはガンガン課金してSRキャラたくさん手に入れますから！」

パワプロ「…言い過ぎたかな…｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

パワプロ「でもあれは矢部くんが悪いよな…｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

パワプロ「だってぼくが働いて稼いだお金なんだ、何に使おうと勝手じゃないか…｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

パワプロ「…そうさ、ぼくは悪くない、余計な口出ししてきた矢部くんが悪いんだ｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

パワプロ「…あ、またDランクだ…矢部くんのこと考えてるから集中出来ないんだな、よし忘れようあんなクソメガネ｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

パワプロ「…それよりも帰り道にコンビニで買ったiTunesカード3万円分…早く課金してあのキャラを…｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

モブA「…最近パワプロのやつ痩せてきてないか？」

モブB「…だよな、明らかに痩せてるし体調悪そうだよな」

モブA「あれ大丈夫なのか？倒れそうだぞ？」

モブB「矢部ー、パワプロどうしたんだよ？」

矢部「…オイラに聞かないでくれでやんす、何も知らないでやんすよ」

モブB「お前ら仲良いじゃないか、それなのに何も知らないのかよ」

矢部「知らないって言ってるでやんしょ！！パワプロくんのことなんて知らないでやんすよ！！」

モブA、B「お、おう…」

矢部（…とはいえ…確かにあの痩せ方は気になるでやんす…」

矢部（パワプロくんとはあれから口をきかないどころか目も合わせてないでやんすけど…）

矢部（パワプロくんはオイラの親友…心配でやんす…でも…）ｶﾞﾁｬ
部室のドア開けー

パワプロ「…｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

矢部「…パワプロくん…」

パワプロ「…矢部くん｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

矢部「……ねぇパワプロくん…体調悪そうでやんすけど…どうかしたのでやんすか？
オ、オイラは全然気にしてないでやんすけど、部員のみんなが心配してるのでやんす」

パワプロ「…はは、なんでもないよ、ただ最近昼ご飯とか抜いてるだけさ｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

パワプロ「新キャラ追加されたから…もっと課金して…ガチャしないと…｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

矢部「な！？そんな明らかに具合悪そうだし、痩せてるじゃないでやんすか！？このままだとパワプロくん…倒れてしまうでやんすよ！！」

パワプロ「…そんな大袈裟だよ矢部くん…まぁ、アプリに課金したいから節約ってのもあるけど最近太り気味だったからちょうどいいんだよ…｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

矢部「…そんな…パワプロくん…」

パワプロ「…矢部くん、この前はごめんね…ちょっと…いや、かなり言い過ぎた…ごめん…｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

矢部「…もう気にしてないでやんす…パワプロくん、おせっかいだと思うでやんすけど…」

パワプロ「…うん、気をつけるようにするよ…心配してくれてありがとう…｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

矢部「…わかってくれればいいでやんす…じゃあお先するでやんすよ…｣ｶﾞﾁｬ

パワプロ「…うん、また明日…｣ｽﾏﾎｲｼﾞﾘｰ

矢部「幸いにも命に別状はなかったものの入院生活を余儀なくされ、主力を欠いたオイラたちパワ高は甲子園予選初戦敗退を喫した」

矢部「パワプロくんは責任を感じ野球部を退部した」

矢部「責任を感じたというのは建前で恐らくバイトに専念してアプリに課金するためだろう」

矢部「部活を辞めたパワプロくんは節約生活しながら今もアプリに夢中だ」

矢部「オイラは親友をこんな目に合わせたアプリの会社を許さない」

矢部「オイラの卒業後の進路は決まっている、このアプリを作っている会社へ就職だ」

矢部「そして内部からこのゲームを壊してやる、そしてパワプロくんの目を覚ましてやる」

矢部「頻繁に起きている不具合や新製品が軒並み評判が悪いのはもしかしたらオイラのせいかもしれないでやんす」

矢部「でも、これも親友のためでやんす」

矢部「みんな、もうしわけないでやんす｣ﾆﾔﾆﾔ

終